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継帝記異聞録

廃墟の怪 - 9

 尚正の後について明日見が階段を降りて来た時、尚正が一階の踊り場で一旦足を止め、背後を振り返った。
 「ここまでは厳重な結界が張ってあるし、相手の本体からの距離も少し離れてるから、滅多な事は起きないだろうけど、この階段の奥がいよいよ奴らの縄張りになる」
 明日見が尚正の肩越しに伸びる下り階段の奥に視線を向けると、そこには僅かな生命の瞬きもない、粘り気を帯びた濃密な無明の闇が待ち受けていた。
 『丸賀反乱事件』の惨劇以降、この廃墟だけが周囲から取り残されて、ここだけ時間が止まってしまった様に感じられるのも、未だこの土地の者にとっては『丸賀反乱事件』が単なる歴史的事件として扱うには生々しかったし、事件直後から度々取り沙汰された幽霊騒動もそれに拍車をかけていた。
 幽霊騒動そのものにどの程度の信憑性があるか…という事自体の問題が最初にあるのだが、不特定多数の住民が騒動に巻き込まれている事、また、『丸賀反乱事件』をきっかけとして度々騒動が持ち上がる事から、何らかの原因はあるのだろう。
 しかし、それが幽霊…つまり人が死した後、『常世の国』へ赴かずに何十年も人の世に留まるという事が果たしてあるのか、明日見には疑問だったし、かといって自分なりに判断する為の材料も持ち合わせていなかった。
 創世神話を始めとしたこの世界の成り立ちを記す幾つかの経典には、『人は中原に自らの住まいを与えられ、死した後は常世の国へ赴く』旨の記述があるが、我々人が生身のままで常世の国を訪れる事が不可能である以上、あるいは死して常世の国に移り住んだ者と言葉を交わす事が叶わぬ以上、経典の記述を信じて『天帝がそう定められたのだから、そうに違いない』と納得するしかない。
 明日見自身、中原に下って以降、得体の知れぬ物の怪に付きまとわれているのだから、そういった人や動物ならざる妖しのもの…いわゆる魔物の類いが存在する事は肯定的に受け止められた。
 だが、それは世界を治める天界の神々…とりわけ天界の長である天帝の意に沿わなかった者が、死後『黄泉路の国』へ下って魔物と化すのだといわれており、魔物はもはや人ではないのだから、天帝に仇なし人々を惑わす悪事を働いても不思議ではない。
 聞くところによれば『黄泉路の国』は居心地がよくないそうだから、魔物達は時折『黄泉路の国』から中原に顔を出しては、からかい半分に人々を惑わす事件を引き起こすのだそうだ。
 だから、魔物が巣食っているというなら話はわかるが、幽霊といえば死んだ人の体から抜け出した魂である。
 一度『黄泉路の国』に下って、魔物と化した後に地上に舞い戻った…というならまだしも、死んですぐの無垢なままの魂がそのまま地上に留まって人々を惑わせたりするのだろうか…。
 例の物の怪の件もあったが、明日見にとってはその部分がすんなりと納得できなかった。
 死者の魂は、天界の使者がそれぞれの次に赴くべき場所へ導くのではなかったのだろうか?
 「…大丈夫か?」
 尚正に軽く肩を叩かれて、明日見はふと我に帰った。
 「ごめん。大丈夫だから…」
 怪訝な表情で覗き込む尚正に、明日見は呆然と返答する。
 「本当か? まぁ、僕がついている限り、滅多な事にはならないと思うから、安心してくれていいよ。尤も、明日見なら『怖気づいたなら今からでも引き返した方がいいぞ』と親切に助言しても、聞き入れるとは思えないけどね」
 厭味な言い方を…明日見は、尚正の言葉に少々不快感を覚えつつも、沈黙を保ったままやり過ごした。
 目の前に立ちはだかる、魔物や怪異現象といった人界とは相容れない世界に対応するには、少なくとも自分よりは尚正の方が高度な知識を有しており、場数も踏んでおり、適切な対処法を講じる事が出来るであろう。
 それは、先程まで尚正が念入りに仕組んでいた結界を見れば明らかだし、今の明日見には他に頼るものが無かった。
 だからこそ、些細な個人的感情で、今、尚正との関係を拗らせる行動を取るのは、明日見にとっては得策ではなかった。
 ふと、尚正の表情が硬く引き締まり、これまでの人好きのする愛嬌のある顔は、一転して冷徹ながら凛とした氷の表情へ変貌する。
 「もし、地下に入ってから異変を察知したら、すぐに僕に教えてくれないか」
 「異変って?」
 「例えば、幻覚や幻聴、それに身体的な変化…とにかく、なにかおかしいと感じたら僕に言ってくれないか。多分、地下に巣食う連中が、明日見にも干渉してくるだろうから、例えそうなっても早めに対処したいからね」
 尚正の言葉に、明日見は例の物の怪に関わる諸現象を思い出し、あの惚けた老人が首から上だけを青白い光に浮き上がらせる様子と、同じ様な現象が現れるのだろうか…などと根拠も無く想像していた。
 「それから、これを渡しておくから、必ず手に持っておくんだ」
 尚正は、懐から一見ランプを思わせる金属製の細長い道具を取り出し、火を点けてから明日見に手渡す。
 「これは魔光蝋(まこうろう)といって、特殊な光を放つランプの一種だ。これを持っているだけでも、邪まな存在の干渉をある程度防げるから、絶対に手放さないで」
 「うん」
 明日見は短く頷く。
 尚正の表情を見れば、それが単なる脅しでない事は分かる。
 「じゃあ、明日見。これから入るけど、心の準備はいい?」
 尚正が再度念を押すと、明日見はそれに無言のまま頷いた。
 尚正が明日見の目の前で、臆する事もなくスルスルと漆黒の闇に塗りたくられた階段を下っていく。
 ランプを持っている訳でもないのに、まるで尚正にとってのそこは日光の燦々と降注ぐ屋外とでもいう様に、全く躊躇せずに闇の奥へと消えていく。
 明日見も、尚正から預かった魔光蝋を掲げて、足元に十分注意を払いながら、一歩ずつ慎重に階段を下っていった。
 地下階層は、灯り一つ無い閉鎖空間といってよかった。
 ランプや蝋燭、たいまつと言った人工的な灯火を点さなければ、屋外とを僅かに繋ぐ階段以外に、地下階層を照らす明かりは存在しなかった。
 今の二人にとっては、明日見の手にした魔光蝋の怪しげな青白い光だけが、唯一の光源だった。
 しかし、尚正は魔光蝋の灯りに頼る事無く、地下一階の通路を足早に通り過ぎる。
 明かりもないのに、地上階を通過するのと何ら変わらぬ速さで潜り抜ける尚正に、明日見は怪訝な表情を浮かべつつも、慎重な足取りで後を追う。
 地下一階は、多分倉庫として使用されていたのだろう。
 部屋と部屋を覆う仕切りも余り無く、中央に空けられた比較的大きな空間を、四方から通路で取り囲むという構造になっている様だ。
 「明日見、この階は取り合えず問題なさそうだ。問題は地下第二階層だな」
 先に地下一階をざっと見て周り、いつの間にか明日見の傍らに戻っていた尚正が言う。
 「地下二階まで行ってきたの?」
 「いや、入口から覗き込んでみただけだ。でも、質の悪そうなのがうようよいる。この階が比較的大人しいのは、多分上に張った結界の効果だと思う。」
 明日見のかざす魔光蝋の灯りだけでは、尚正の細かい表情までは読み取れなかった。
 しかし、さすがに場数を踏んでいると自称するだけあって、泰然自若としているというのが明日見の印象だった。
 明日見にとっては未知の世界への侵入であるだけに、尚正の姿勢は頼もしく思えた。
 「あの、一つ聞きたいんだけど…」
 この階は然程危険でないという尚正の言葉を聞いて、明日見にも若干心の余裕が生まれてきていた。
 そこで、ここまでに感じた疑問を問い質してみようと思ったのだ。
 「尚正はランプのような物を一切持っていない割には、まるでここが光に満ち溢れているみたいに、普通に動いている様に見えるんだけど」
 「あぁ、俺は心眼を使っているからね」
 「心眼?」
 「うーん、神の御業と言われる神通力のうちの、天眼通に近い能力…といえば、分かってもらえるかな?」
 天眼通と言えば、その場にいながらにして千里も先を見通せるという、まさに天界の神々を除けば一部の仙のみが会得する特殊能力である。
 仙と修行者の庵であり、また、今となっては明日見の故郷でもある、不似の山の中腹にひっそりと佇む『天元堂』にも、天眼通を自在に操る者は数名しかおらなかった。
 人としての暮らしを諦め、長期に渡る辛い修行の日々を経て初めて会得出来る神の御業を、明日見と然程年も変わらぬ青年が自在に操れると言うのだろうか?
 しかし、尚正は天眼通ではなくて心眼と言った。
 「天眼通は、千里も先を見通すと言われる能力だけど、それはあくまでも下界を見渡す能力だ。しかし、心眼はこの世の存在ではないものを見る事が出来る。いわゆる魔物や物の怪、幽霊と言った類いの存在をだ。実際に目で見る感覚とはかなり違うけど、心眼でそれらの存在を感知する事が出来る。心眼を使うのに光は必要が無いから、こういう場所では目で見るよりも好都合と言うわけさ」
 どうも良く分からないけれども、光の無い所での探索には役立つ能力らしい。
 「という事は、尚正にはこの地下階層に跋扈していると言う幽霊も見えているのでしょう? 私には分からないのだけど、どうなっているの? 実際の所」
 「この階層はどちらかと言うと大人しい方だけど、それでも地上部分とは比べ物にならない程、怪しげな連中が犇めいているよ。それでも連中が僕達に手出し出来ないのは、この上に強固な結界を張っている事が一つと、僕自身の力が連中よりは上回っている事、それから、魔光蝋の威力も意外と馬鹿に出来ないんだ」
 このランプが…明日見にとっては足元を照らす灯りとしての役にしか立っていない…そうとしか思えない魔光蝋が、意外と重要な役割を果たしていると言う事実は、この世ならざる者を見る事が出来ない明日見にとってはピンと来なかった。
 確かに皮膚感覚として、外気とは異なった危機感を高める感触がある事は理解していたが、心眼を持たぬ明日見にとっては、石積みの壁と床で仕切られた幾つもの部屋を、一直線に貫く通路が結んでいるだけであり、それ以外に特筆すべきものは何も見出せなかった。
 「ねえ、この下の階層には『質の悪い連中がうようよいる』そうだけど、例えて言えばどういう感じなの? 今の所、私にはそういった特別の感覚は感じられないけど、大まかな印象だけでも教えてもらえるとありがたいのだけど」
 「そうだな…例えて言えば、途轍もなく『青龍』の機嫌が悪い日の『竜の絶海』のど真ん中に放り込まれた気分、とでも言えばいいのかな。あるいは、戦で単身敵の大将に切り込んだ所が、気が付けば周囲を十重二十重と敵兵に取り囲まれていて、絶体絶命の危機。いずれにしても、気分のいい場所でない事だけは確かだ」
 『竜の絶海』とは、この中原地帯の西に広がる、果ての知れない広大な海の名称である。
 『竜の絶海』には、神の化身とも神の使者とも言われる『青龍』が住むとされており、遥かな太古から人々の侵入を阻んできた。
 古の神話によれば、『青龍』の気性の荒さは有名であり、『青龍』が機嫌を損ねている時は『竜の絶海』が嵐に見舞われるのだそうだ。
 そして、『竜の絶海』が嵐に見舞われない時は、太古より殆どなかった…と、古の書物は伝えている。
 明日見には、『竜の絶海』を直接訪れた経験はない。
 全ては、不似の山の庵、『天元堂』に生活した間に、古の書物からの知識として学んだだけだ。
 ちなみに、『竜の絶海』を超えた遥か彼方に、人の霊が死後に訪れるとされる『常世の国』があるのだという。
 「そう言われても良くは分からないけど、とにかくここよりも更に危険らしい…と言う事だけは言えるみたいね」
 「まぁ、一言で言えばそういう事だね。そうしたら、僕はざっと拠点作りでもしてくるから、明日見は取りあえずここで大人しく待っていてくれないか?」
 「拠点作り?」
 「上の階層に作った結界が本拠地だとすれば、出先の前線基地とでも言えば良いのかな。この階層にもすぐに逃げ込める程度の小さな結界を作っておいて、いざと言う時に備えるんだ」
 「なるほどね」
 「場合によってはこういう余計な手間は省略する事もあるけど、今回は些細な手抜きが重大な過失に繋がりそうだし、明日見が一緒にいる事もあるからね」
 「もしかしたら、尚正にとって私は結構邪魔な存在なんだ」
 「あはは。今までは強気一辺倒で、一人でも地下に潜ると言っていた勢いはどうしたんだ? まさか、ここまで来て怖気づいたとか?」
 「まさか。でも、魔物とか幽霊といった存在は、私にとっては今まで縁のなかったものだし、私がいるせいで尚正の手間が増えたり、最悪もしもの事があったら気が咎める…それだけ」
 「確かに下の階層は危険な匂いがプンプン漂ってくるよ。でも、だからといって僕一人で対処出来ないと言うほどではない。心眼を使うとね、そういった相手の大まかな力量も分かるんだ。そもそも、幾ら明日見が僕に同行したいといっても、僕の力量で対処出来る見込みがなければ、最初から同行を許したりはしていない。だから、その辺は安心してくれていいよ。多少のトラブルはあるかもしれないけど、無事に地上まで送り届けるから」
 「うん。何かごめんね。でも、自分で対処出来る事は、可能な限り自分でするつもりだから」
 「その意気込みさえあれば、滅多なトラブルには巻き込まれないさ。そうしたら、いつまでもここで雑談している訳には行かないから、拠点を作ってくるよ」
 尚正はそういい残すと、濃密な闇に覆われて全く視界が利かない筈の空間へ、日の光を浴びている時と全く変わらない様子で歩いていった。
 石積みの壁で四方を囲まれた廊下に一人取り残された明日見は、左手に掴んだ魔光蝋の青白い怪しげな光を翳して、改めて周辺の様子をしげしげと観察していた。
 魔光蝋は、火が点いているにも拘らず、手で握っていても全く熱さを感じなかった。
 多分、尚正の常用している道具なのだから、通常のランプと違って、何か特別の材料なり製法があるに違いない。
 明日見にとってはその詳細までは思いもよらなかったが、その不思議な道具に少しだけ興味が湧いていた。
 尚正は、魔光蝋の放つ明かりは、邪な物を退ける効果があると言っていた。
 下の階層には及ばないものの、この階層にも何らかの怪しげな存在がいるそうだから、尚正の言葉通り、魔光蝋の明かりがそういった怪しげな存在を遠ざけているから、自分にはこれといった異変は感じられないのだろうか?
 心眼の使える尚正には、この階層にも怪しげな存在が徘徊している事を知覚出来る様だが、やはり明日見にはそこまでの感覚はない。
 但し、言われて見れば確かに、屋外と比べれば異様な雰囲気に包まれている…といった程度の事は、何とか明日見にも感じられた。
 しかし、人の世界では明日見を危機から救い出す役にも立つ、そういう人並み外れた感覚は、人を超えた存在に対しては全くの無力であると思い知った。
 自分の能力の限界も知らずに、一人『廃墟の怪異の原因を突き止めよう』だなんて、自分自身が余りに物を知らぬが故の奢った考えに、自分で自分が恥ずかしくなった。
 もし、尚正に出会わないまま、一人でこの地下階層に足を踏み入れていたとしたら、一体自分は今頃どうなっていたのだろう?
 そういう意味では自分は幸運であり、尚正に少しでも手間をかけさせない様に、迷惑をかけない様に、自分でも肝に銘じておかなくてはならない。
 それから程なく、拠点作りを終えたと思われる尚正が、先程離れていった時と全く変わらない様子で戻ってきた。
 「お待たせ。俄か作りではあるけど、仮の拠点は確保したから、いよいよ下の階層に向かおうか」
 尚正は、それこそ日用品を購入しに町へ出かけよう…とでも言わんばかりの気軽な口調で明日見に告げた。
 幾ら尚正にとっては何度も体験しており、生業でもある魔物退治ではあっても、明日見にとっては全く初めての体験である。
 その上に、先程から尚正に尤もらしい注意や忠告を受け、また明日見自身もこれまでの経験とは全く勝手の違う場所に足を踏み入れて、いやがうえにも緊張感が高まって来ていた。
 「明日見、そんなに硬くならないで。大丈夫、俺がきっちり守りきってあげるから」
 そういって悪戯っぽく微笑む尚正の顔は、まさに新たな興味深い玩具を見つけたやんちゃ坊主…といった風であった。
 これまでに比べて、急に弱気が頭を擡げて来た明日見に対して、尚正は内心嘲って明日見の気持ちを弄んでいるのか、それとも、未知との遭遇を間近に控えて、緊張の極みに達する明日見の心を落ち着けさせようと言う気遣いなのか、明日見には良く分からなかった。
 それでも、自分の心の中に犇いている迷いと戸惑いを無理やり振り払うと、無言のまま頷いて尚正の後に従った。
 「ここが拠点だから」
 尚正がふと立ち止まる。
 拠点といっても、石積みの壁に囲まれた通路に面した小部屋…と言うよりは、通路の一部が矩形に凹んでるというだけの空間だった。
 尚正が拠点と呼ぶ一角の壁に魔光蝋の光を翳すと、やはり上の階層の結界と同様に、紙のお札が何枚か貼り付けられている。
 「滅多な事はないと思うけど、もし明日見が僕と逸れてしまったら、ここまで戻ってくるんだ。この空間に入れば、余程力の強い魔物でもない限り、大抵の奴はやり過ごせる」
 「逸れてしまったらって…」
 「もしもの事がないとは言えないだろう? ここに巣食う魔物の件は別にしたって、城の地下階層といえば様々な仕掛けが施されていても不思議じゃないんだから」
 「そうね」
 「だから、もしもの事があったら、明日見は俺を見捨てて良いから、自分でここまで戻ってくるんだ」
 「見捨ててって、そんな事が出来る訳…」
 「だったら、魔物に関する知識も、魔物除けの道具も技術も持たない明日見が、どうやって一人でこの地下階層を探索するんだ?」
 確かに、尚正の言う通りだった。
 もし緊急事態が生じて尚正と逸れてしまったら、明日見には自分の身を守る為にすごすごと引き返す位の事しか出来はしないのだ。
 「うん。わかった」
 「それでいい。俺はこういう経験を何度もしているから、一人なら何とでもなるさ」
 そういって微笑む尚正の表情に、明日見は複雑な心境を抱かざるを得なかった。
 「それじゃ、いくよ?」
 「うん」
 尚正の背中について、拠点のすぐ先にある通路の突き当りへ向かった。
 そこには、下の階層へと繋がる階段が佇んでいる。
 ここは既に深遠の闇の中である筈なのに、階段の奥に続く闇はそれよりも一層濃密な闇に見えた。

(続)

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